山梨の賃貸ガレージハウスで実現したEVライフ(中編) —
賃貸ガレージに、8kWの充電器を設置するまで
電気自動車(EV)のポルシェ・タイカン4Sを迎えるにあたり、山梨の賃貸ガレージハウスに普通充電器を設置しました。見積もりの依頼から実際に8kWで充電できるようになるまで、およそ3か月。第2回は、機種の選び方から工事完了までの道のりをお伝えします。
まず、クルマを購入する
第1回でお伝えしたとおり、私は年明けにイブニオンへ見積もりを依頼しました。その時点では、実は車もまだ確定していません。
候補はBMW iXか、ポルシェ・タイカンでした。山梨という場所柄、四輪駆動であることは譲れない条件でしたが、どちらもそこはクリアしています。そんな折に知人のカーショップにタイカン4Sが入ってきたのですから、これはもう縁というほかありません。
車が決まれば、次は充電環境です。ここからがイブニオンとのやり取りの本番でした。
機種選びで伝えた条件は二つ
私が最初にお伝えした希望条件は、二つありました。
ひとつは、できるだけ出力の高い充電器が欲しいということ。電費の面で厳しい高性能車に頻繁に乗る以上、充電に不自由を感じたくなかったからです。
もうひとつは、充電の状況が見えること。何時から何時まで充電して、それが何kWhだったのか。そうしたことが分かる仕組みがあるとうれしい、とお伝えしました。数字が見えてこそ、EVという乗り物を自分なりに評価できると思っていたからです。
この二つをお伝えしたところ、「この機種はソフトウェアも付いていますよ」とご提案いただいたのが、いま設置されている8kW仕様の「Wallbox PULSAR PLUS」です。
参考:イブニオン マーケットプレイス Wallbox PULSAR PLUS
ここで、これから検討される方のために補足しておきます。私と同じスペックが誰にでも必要かというと、決してそうではありません。平日はときどき買い物に出て10〜20km、週末に少し遠出をする。そうした使い方であれば、200Vコンセントを設置して、車載の充電器を使用した3kW充電でも十分に成り立ちます。3kWでも一晩つなげば数十km分は入りますし、平日のうちに少しずつ戻しておけば、週末には300km走れる状態になっています。そのくらいの距離感であれば、200Wのコンセントを設置するだけ、という選択肢は現実的です。
一方で、毎日それなりの距離を走る方、電費の面で厳しい高性能車に乗る方、そして充電のことをあまり考えずに暮らしたい方には、出力の高い充電器が効果的です。
参考:EVの「充電にかかる時間」は?
電気の工事は、すぐには始められない
1月22日、現地調査。遠方からスタッフの方に来ていただき、1時間ほどかけてガレージの状況、分電盤の位置、配線の経路などを見ていただきました。
そしてここで、私は自分の無知を知ることになります。電気の工事は、そう簡単には始められないのです。
私の場合、充電中にほかの電気機器を併用しても容量不足にならないよう、契約を40Aから10kVAへ変更しました。
その申請が2月2日。こうした工事は、充電器を取り付ければ終わりというものではありません。既存の契約容量や電気設備を確認し、必要に応じて契約変更を申請。そのうえで電力会社の手続きを進め、工事日を調整して充電設備を設置する、という順番で進める必要があります。この段取りの全体像を把握して、順番に片づけていってくれる存在がいなければ、どこかで止まっていたと思います。
電力プランについても、イブニオンからのアドバイスをもとに検討し、最適なプランを見つけて契約することができました。
すべてのプロセスを終えてありがたく感じたのは、複数の関係先をひとつの窓口としてまとめてくれるイブニオン株式会社の体制でした。今回の設置では、充電設備の提案・選定、現地での電気工事、充電器を管理・制御するアプリや運用システムの提供など、それぞれの分野を専門とする会社が連携しています。
それぞれに専門分野があり、ユーザーである私が個別に各社へ依頼しようとしても、どこに何を頼めばよいのか簡単には分かりません。個人が自分で電気工事会社を探し、必要な電力の手続きを行い、充電器や運用システムまで選ぶことを考えると、これらをひとつの窓口でまとめて相談できるメリットは大きいと感じました。
既存賃貸物件だからこそ、現場で相談する
今回は、すでに完成している賃貸物件のガレージハウスに、後から普通充電器を設置するという点がひとつのハードルでした。配線の取り回しや機器の設置場所など、既存の建物に合わせて検討しなければならないことも少なくありません。 そうした制約のなかで、「この方法なら設置できます」「こちらに配置したほうが使いやすい」といった具体的な提案を、現場で細かくもらえたのは本当にありがたいことでした。
具体的には、次のような点です。
- 設置位置:ガレージには前から入れて停めるため、タイカンの充電口がある右側面にケーブルが届く位置に
- ケーブルの長さ:ガレージが埋まっているときでも、タイカンを脇に停めて外から引っ張って充電できる長さを確保
- 高さと配管:操作しやすい高さに設定し、配管は目立たないように処理
当初の相談では、もう1mほど奥、タイカンの充電口のちょうど真横という案もありました。それを現場で相談しながら、屋外でも充電できる位置に落ち着きました。おかげで日常的にまったく気になりません。充電器がそこにあることを意識せずに使えているというのは、それ自体が仕上がりの良さなのだと思います。
まずは3kWで動き出す
担当の方のフォローのおかげで、この日はまず3kWでの充電を開始することができ、4月の本工事にはご担当の方が私の代わりに立ち会ってくださることになりました。
そして4月6日、電力量の切り替えがついに完了し、8kWでの充電が始まりました。スペック上の8kWに対し、実効値では7kWが出ています。
工事費用は、分電盤からの距離が近く、壁の中に配線を通す必要のないシンプルな工事だったことも幸いし、私の感覚では「これでこの環境が手に入るのか」という水準でおさえることができました。その後の燃料代の差を考えれば、満足度は高いです。
なお、いまは補助金の制度もあります。一般家庭向けの設置にも枠があり、こうした情報も含めて相談できるのはありがたいところです。実際、補助金をきっかけに個人の方からのお問い合わせが増えているとも伺いました。
参考:EV補助金活用ガイド
依頼から3か月弱。振り返ってみると、出力の高い普通充電器の設置には、想像していた以上に下調べが必要でした。逆に言えば、その下調べを引き受けてくれる相手がいれば、賃貸でも、地方でも、道は普通に開けています。私がタイカンを買おうと決められたのも、そこに見通しが持てたからでした。
そして翌朝から、私の暮らしは少しずつ変わっていくことになります。次回は、8kWの自宅充電がある毎日についてお伝えします。
Seiji Tanaka 田中 誠司 PRストラテジスト、ポーリクロム代表取締役、VisionVoice取締役、PARCFERME編集長
自動車雑誌『カーグラフィック』編集長、BMW Japan広報部長、UNIQLOグローバルPRマネジャー等を歴任。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。近著に「奥山清行 デザイン全史」(新潮社)。モノ文化を伝えるマルチメディア「PARCFERME」編集長。2026年、働く人の「声」を経営資産に変えるAIサービス「VisionVoice」創業。