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EVの「充電規格」のいろいろ

最終更新日:2024年10月1日

電気自動車(EV)の充電には、低出力で長時間を要する「普通充電」と、高出力で短時間の「急速充電」の2種類があります。充電完了までに十分な時間が確保できる場合は、コストなどの点から普通充電が適しています。長距離走行の途中で充電を必要とする場合や、買い物や食事などの短時間で済む用事のついでに行う場合は急速充電が便利です。搭載しているバッテリー容量によりますが、普通充電の充電完了には数時間から十数時間程度を要することが一般的です。

参考:EVの「充電にかかる時間」は?

急速充電の方式

日本国内では主に「CHAdeMO」規格が用いられています。この他にテスラが独自に展開する「NACS」方式も展開されています。海外ではこれ以外に中国の「GB/T」、米国の「CCS1」、欧州の「CCS2」などの方式があります。また、日本のCHAdeMOと中国のGB/Tによる将来規格として、より高出力な「ChaoJi」が発表されています。

日本 CHAdeMO
米国 CCS1
NACS
欧州 CCS2
中国 GB/T
日本・中国 ChaoJi
充電規格のイメージ画像
急速充電ってバッテリーに悪いの?

急速充電は充電時間の短縮が可能な一方で、リチウムイオン電池の寿命に影響を与える可能性があるとされています。しかし、現代のEVバッテリーは8年または16万kmの範囲で一定の劣化に対して保証(※)されているものもあります。また、最新のEVは充電時の電池温度管理や充電制御が進歩しており、通常利用ではさらに長い寿命を期待できるとの見解もあります。

※バッテリーの保証内容などについては、車両取扱説明書やメーカー・ディーラーの公式情報をご確認ください。

普通充電とは?

普通充電は主に自宅や事業所などで、日常的に行う充電方法です。日々の走行で消費したバッテリーの電力を、駐車場に停めている間に充電します。充電出力は3kWや6kWが一般的ですので、満充電には長時間を要しますが、クルマを使用していない間に充電できるのでとても便利です。

普通充電の規格とは?

日本国内の普通充電には、交流100V/200Vを使用します。国内で販売されているEVおよびPHEVは、米国自動車技術会(SAE)のSAE J1772規格に準じています。この規格は国際電気標準会議(IEC)のIEC 62196-2 Type-1とも互換性があり、国内で広く使用されています。

普通充電の3つのモード

普通充電にはMode1からMode3までのモードがあります。Mode1はケーブルをEV専用コンセントから車両に直接接続する方法です。ケーブルはコンセントから車両に電気を送るのみのシンプルな構成です。現在販売されている車種では使われていません。

Mode2はMode1の構成に車両と通信しながら充電を制御するコントロールボックスをケーブルに内蔵したもので、現在販売されている車種に付属のケーブルの多くはこのタイプです。Mode1とMode2では、充電のたびにケーブルをコンセントと車両に接続する必要があります。

Mode3は駐車場に設置するポール式や壁掛け式の充電器です。コントロールボックスを充電器側に内蔵しており、ケーブルを充電器側に収納できます。充電時はケーブルを車両に接続するだけですので、最も手間がかかりません。充電器によっては予約充電機能を備えており、家庭の受電容量を超えないようにしたり、安い電力料金の時間帯での充電を優先させたりすることが可能です。

Mode1とMode2の充電出力は3kWまでのものが多いのに対して、Mode3は6kWの充電器が充実しています。

EVのバッテリーは技術の進歩に応じて年を追うごとに大容量化しています。より高速で、より便利にEVを利用できるよう、6kWのMode3充電器の設置を推奨します。

普通充電のモードについて
Mode1 単純にコンセントからEVへケーブルを接続する方法
Mode2 充電ケーブルに制御回路を内蔵したもの
Mode3 充電器側に制御回路を追加したもの、ポール式や壁掛け式がある
壁掛け充電器設置のイメージ画像
OCPPとは?

OCPP(Open Charging Point Protocol)は、充電器と車両が通信するための国際標準通信プロトコルです。これにより、充電状況の監視や制御が可能となり、エネルギーマネージメントサービスに活用されています。

スマートチャージングとは?

スマートチャージングは、電気会社の電力網である系統電力に対する「グリッド接続」や建物の配線に基づいて、EVの充電電力や消費エネルギーを管理します。電気負荷の管理やピークカット(電力使用量が一定水準を超えると単価が上がるなどの事態を避け電気代の高騰を抑制)、異なる充電器間の連続充電、予定されている運行スケジュールに基づいた充電が可能です。

スマートチャージングイメージ画像
充電設備に必要な電力、その設置と管理

家庭用の普通充電で3kWの場合は、単相200V/15Aの供給が必要です(6kWは200V/30A)。公共施設や商業施設に設置する急速充電の場合、50kWの充電器には三相200V/250Aの入力が必要であり、複数台の設置には高圧引込が必要になります。また、設置には電気工事士の資格が求められます。工場やビルなどは600V以上の高圧受電契約の場合が多く、その場合は事業所に選任されている電気主任技術者に相談して指示を受ける必要があります。

参考:「充電器の選び方と設置方法」は?


EVの充電規格のポイント
国内の主な充電規格
  1. 普通充電: SAE J177
    概要
    自宅や公共の充電スポットで幅広く使用される普通充電規格。
    特徴
    • 低出力で長時間の充電が必要(通常3 kWから6 kW)。
    • 一般家庭の200V電源を使用することが多い。
    • 主に家庭や公共の駐車場で夜間充電などに使用する。
  2. 急速充電: CHAdeMO
    概要
    日本で開発された急速充電規格。
    特徴
    • 高速充電が可能(最大出力150 kW程度)。
    • 双方向充電(車両からも電力を供給する機能)が可能。
    • 主に日本国内および一部の海外市場で普及している。
    • 電動バスや大型車両にも対応。
  3. テスラ独自規格: NACS(North American Charging Standard)
    概要
    テスラ社が独自に開発した充電規格。普通充電と急速充電をひとつのコネクターで兼用。
    特徴
    • 高出力急速充電が可能(最大出力250 kW)。
    • テスラ車専用のコネクターを使用する。
    • テスラの充電ネットワークに接続された充電スポットで利用可能。
    • CHAdeMOアダプターでCHAdeMO急速充電器を使用可能
  4. その他充電規格
  5. 北米・欧州の充電規格: CCS(Combined Charging System)
    概要
    欧米発の充電規格。(北米がCCS1、欧州がCCS2)
    特徴
    • 急速充電と普通充電の両方が1つのコネクターで対応可能。
    • 高出力急速充電に対応(最大出力350 kW程度)。
    • 主に欧州と北米で採用されている。
  6. 中国の充電規格: GB/T
    概要
    中国の充電規格。
    特徴
    • 急速充電と普通充電の2つのコネクター形状が存在する。
    • 中国国内での普及が進んでいる。
  7. 将来の充電器企画(日本・中国): ChaoJi
    概要
    日本と中国の共同開発中の充電規格。
    特徴
    • 最大900kWの充電となり、CHAdeMOやGB/Tより高出力での充電が可能。
    • アダプターの使用によりCHAdeMO、GB/T、CCS、NACSの充電器を使用可能。
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