EV用充電器には、「普通充電器」と「急速充電器」があります。ここではEV導入時に自宅や事業所に設置すると便利な「普通充電器」について説明します。
普通充電器のタイプと特徴
普通充電器は100Vまたは200Vのコンセントを使用するため、一般的な住宅や職場にも設置可能です。
普通充電器のタイプにはいくつか種類があり、それぞれに特徴やメリットがあります。
- スタンドタイプ
自立式の充電器で、一般にはケーブルが付属しています。充電のたびにケーブルをEV車両から出し入れする必要がなく、利便性が高いことが特徴です。充電時間が短縮できる高出力タイプ(6kWやそれ以上)もあります。ケーブル接続部分の水濡れの心配がなく、汚れにくくもなります。また車両との接続を確認する通信機能により、安全性も高くなっています。(この充電方式を一般にMode3といいます。詳細はEVの「充電規格」のいろいろをご参照下さい。)
さらに充電器によってはタイマー機能や通信機能を活用したエネルギーマネージメントによる電力料金の節約ができるものもあります。価格はほかのタイプに比べやや高くなります。
- 壁掛けタイプ
前述のスタンドタイプと同様の機能を持っており、自立せず建屋の壁などに設置するタイプの充電器です。こちらも本体にケーブルが付属しています。ケーブルを車両から出し入れする必要がなく、また接続チェック機能などが備わるため安全性も高められています。
- コンセントタイプ
建物の壁にEVを充電するためのコンセントを設置するタイプで価格的には最も安価です。別途、充電ケーブルが必要になりますが、車両にケーブルが付属する場合と、オプションで購入が必要な場合がありますので確認が必要です。
設置コストが抑えられる一方で、充電速度は3kWと比較的低速に留まり、車種によっては充電ケーブルが付属していないこと、また充電ケーブルを誰でも取り外せてしまうという、安全性などの懸念があります。スペースやコストの面で、可能であれば上記のスタンドタイプや壁掛けタイプを選択することにより、EVのメリットをより引き出せます。また高出力のスタンドタイプや壁掛けタイプなら、将来バッテリー容量の大きいEVに乗り換えた場合でも充電時間を短くでき便利です。 - コンセントスタンドタイプ
上記コンセントタイプを壁から独立させた自立型スタンドです。基本的な性能に関してはコンセントタイプと同じで、コンセントを設ける壁などがない場合でも設置可能です。また機器によっては、コンセントを雨風から守る収納タイプのものや、ケーブルを外せないようにするロック機構が設定されたものがあります。
コストについてはコンセントタイプより高価ですが、Mode3のスタンド式や壁掛け式より安価になる傾向があります。
スタンドタイプ、壁掛けタイプの通信制御機能(機器により設定有無あり)
スタンドタイプや壁掛けタイプ(前述のMode3機器)には、通信制御機能を持つモデルがあります。この通信機能を、充電時間のシフトなど電気料金削減のためのエネルギーマネージメントに活用します。以下に具体的な機能を紹介します。
- 安価な電力料金での充電
充電器とEVの通信によって、電力料金がより安い時間を選んで充電を行う制御です。例えば昼間の電力が安い場合には、夜の充電を避け、昼間に充電するように制御します。これにより、EV利用の電気料金を削減することができます。 - ピークカット制御
EVの充電には3kWや6kWといった、一般家庭や小さな事業所としては大きな電力負荷がかかります。建物の電力使用量が多い時間と充電する時間が重なると、自宅のブレーカーが落ちる、高圧電力契約の事業所では電力基本料金が上がる、といった問題が起こり得ます。それを防ぐために、電力使用量の多い時間帯を避けるなどの制御を行うことが可能です。
EVを蓄電池として活用する(外部給電機能、V2H)
- 外部給電機能、V2H機器
EVの大容量バッテリーに貯めた電力を、非常時や家庭の電気代削減などの目的で活用することが可能です。
EVを蓄電池として利用するには、前述のEV充電器ではなく、専用の外部給電器、いわゆるV2H(Vehicle to Homeの略)機器を設置する必要があります。
マーケットプレイス、外部給電器 - V2Hができること
充電器の代わりにV2H機器を設置することで、次のような機能を利用することが可能です。非常時の備えだけでなく、電力代の抑制などにも効果があります。
- 非常用電源として
V2H機器を設置してEVを接続すると、非常時などにEVの電力を家庭に供給することが可能です。機器によっては停電時に自動で給電を開始するものもあります。EVのバッテリー容量や各家庭の電力使用量にもよりますが、1日から数日間の供給が可能です。
(注:1日の家庭の電力使用量はおよそ10kWhと言われており、軽EVの電池容量はおよそ20kWh、乗用タイプのEVであればおよそ50~100kWhの電池容量を有しています) - 太陽光発電との連携、電力代の低減
太陽光発電システムを備える家庭、事業所であれば、日中に太陽光による電力でEVを充電し、日没後、電力消費が増える時間帯にEVから給電することで、発電した電力を使い切ることが可能です。また、それでも使い切れなかった余剰電力は、売電することで電力代の削減が可能です。
- 非常用電源として
普通充電器の種類と選び方のポイント
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普通充電器のタイプと特徴
- スタンドタイプ:自立式でケーブル一体型。利便性が高く、安全性に優れ、高出力タイプも選択可能。
- 壁掛けタイプ:建物の壁に設置。スタンドタイプと機能的に近く、大きな設置スペースを要しない。
- コンセントタイプ:最も安価で手軽。充電速度が遅い。安全な取り扱いに配慮が必要。
- コンセントスタンドタイプ:性能はコンセントタイプと同等。コンセントを設ける壁がない場合にも設置可能。雨風防止やロック機能付きのものもある。
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通信制御機能
- 電気代削減:電気料金の安い時間帯を自動的に選んで充電する。
- ピークカット:電力使用量の多い時間帯を避け、自宅や事業所での電力負荷を軽減。電力基本料金の上昇を防ぐ。
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EVを蓄電池として活用
- V2H機器:EVを家庭の蓄電池として使用し、非常時や電気代削減に役立てる。
- 非常用電源:停電時にEVから1日〜数日間の電力供給が可能。
- 太陽光発電との連携:日中の太陽光発電で充電し、夜間に家庭で使用することで電気代を節約。余剰電力の売電も可能。
EVを購入する場合、充電器については一時的な出費に左右されず、利便性を含め長期的な視点で選択することを推奨します。
EVにはこれまでのエンジン車のように「移動するため」だけではなく、搭載する大容量のバッテリーを活用して、非常時の電気を確保したり、自宅の電気代を削減したりする新たな活用方法があります。
EVの可能性を最大限に引き出し、より快適で便利な生活を送りましょう。