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EVをうまく走らせる「コツ」は?

最終更新日:2024年10月1日

電気自動車(EV)は、エンジン車とドライブトレーンの構造が完全に異なるため、回生ブレーキやワンペダルドライブなど、独自の走らせ方があるほか、航続距離を伸ばすコツにも違いがあります。どのような特徴を持っているかを紹介します。

EVならではの走り

EVはエンジンを搭載しておらず、電気で駆動されるモーターはきわめて静粛性が高いため、走行中も車内は静かです。また、重いバッテリーを車体下部にレイアウトしているので低重心で安定した走りが魅力です。さらにEVは、停止状態から最大のトルクを発揮できるモーターの特性により、優れた発進加速を持っていることも大きな魅力のひとつです。

EVの走行中にアクセルペダルから足を離すと、モーターは車両の速度を上げることをやめます。逆に慣性によりタイヤがモーターを回転させて発電し、運動エネルギーをバッテリーに回収します。これを「回生ブレーキ」と呼び、この機能をうまく利用すれば、減速時のエネルギーを回収し駆動力として再利用できるため、航続距離を伸ばすことができます。

回生ブレーキをうまく使うには、できるだけ減速を緩やかに行いましょう。強くブレーキペダルを踏むと、ディスクブレーキなどの機械式ブレーキが作動し、蓄えた運動エネルギーを摩擦熱として逃がしてしまいます。軽くブレーキを踏んだ場合は、モーターの抵抗を利用する回生ブレーキのみで減速できます。

この特性をうまく使うことによって航続距離を伸ばすことができます。これはエンジン車にはなかった、EVならではのメリットです。

車種によっては、回生ブレーキの効き具合や加速時のペダルレスポンスを、オーナーの好みに応じて変更することができます。ドライバーそれぞれに合った加減速の性能やペダルに対する反応と、電費(※)低減のバランスを見つけることが大切です。

※電力量消費率:1kWhの電力でどれほどの距離を走行できるかの指標。

参考:EVの「航続距離」は?

EVならではの走りのイメージ画像

さらにEVには、アクセルペダルから足を離すだけで回生ブレーキによって減速しながら停車にまで至る「ワンペダルドライブ」(※)が可能な車種もあります。

回生ブレーキがあることによって、EVはエンジン車よりもブレーキペダルを踏む回数が減ることが多いですが、この機能があれば、ブレーキペダルを踏まずに車両を停止させること、つまりアクセルペダルだけで加速、減速、停車をコントロールすることができます。

アクセルペダルとブレーキペダルを踏みかえる手間が減り、より楽な運転ができるほか、ペダルの踏み違いリスクも低減することができます。ただし他車の急な割り込みなどの不測の事態に備えるため、ワンペダルドライブ中であっても、ブレーキペダルをすぐに踏める状態である必要があります。

ほとんどのオートマチックトランスミッションのエンジン車では当たり前だったクリープ現象は、EVにはない場合もあります。ワンペダルドライブが可能なクルマは、停車時にアクセルを離しても停車したままで、アクセルペダルを踏むと発進します。クリープ現象のオン・オフを切り替えられるEVもあります(※)。

※ワンペダルドライブやクリープ現象などの機能の有無は、車種により異なります。車両取扱説明書やメーカー・ディーラーの公式情報をご確認ください。

急発進は避けましょう

EVの走らせ方において、急発進はお勧めできません。加速時の消費電力が大きくなることに加えて、バッテリーの劣化にもつながってしまいます。またバッテリーやモーターなどが通常よりも高温になるため、その冷却に電力を消耗して航続距離が短くなってしまう場合があります。非常に強力なモーターを備える高性能EVの場合、サスペンションやボディにかかる負荷が高まることに加えて、路面と設地しているタイヤにも大きな負担がかかり、摩耗を早めてしまう可能性があります。

EVは低重心で安定しているものの、同じような大きさのエンジン車と比較すると重くなる傾向があることも事実です。もちろん増えた重量に対応するサスペンションのセッティングやブレーキ、タイヤを備えていますが、コーナリングや下り坂でのブレーキングには気を付ける必要があります。コーナーや坂の手前で早めにアクセルを緩め、上手く回生ブレーキを使うと、航続距離を伸長でき、安全運転にもつながります。

上手く回生ブレーキを使う運転のイメージ画像
冷暖房の使用について

EVの冷暖房装置はバッテリーの電力を使用するため、航続距離に影響を与えます。

エンジン車の場合は、エアコンのコンプレッサーをエンジンにより駆動する(電動コンプレッサーを使用しているハイブリッド車などを除く)ので、冷房を使うと燃費が悪化します。その一方、暖房はエンジンが駆動のために発生させた熱の余剰分を車内に取り込むので、ほとんど燃費には影響しません。

EVの場合、冷房は電動コンプレッサーを作動させます。暖房はエンジンによる熱源がないため、電気ヒーターや電動コンプレッサー(ヒートポンプ)を作動させます。どちらも電力を消費するため、冷暖房を使用すると航続距離が最大2〜3割ほど短くなります(※)。

しかし、暖房による電費への影響を緩和することも可能です。多くのEVがシートヒーターやステアリングヒーターを装備(※)しているため、暖房の設定温度を低くしても、もしくは暖房を使用しなくても、ヒーターの熱で体を温めることができます。これらのヒーターの方が、室内全体を温める暖房よりも消費電力が少ないため、航続距離への悪影響を最小限に抑えることができます。

※シートヒーター、ステアリングヒーターなどの装備については、車種により設定が異なります。車両取扱説明書やメーカー・ディーラーの公式情報をご確認ください。冷暖房使用による航続距離の変化は車種によって異なります。


EVをうまく走らせる「コツ」のポイント
  1. 急発進は避ける
    • 消費電力の増加とバッテリーの劣化につながります。
    • 高温になったバッテリーやモーターの冷却のための電力消費が必要な場合があり、その分の航続距離が短縮します。
    • サスペンションやボディ、タイヤに負荷がかかります。
  2. 冷暖房による影響
    • EVの冷暖房装置は電力を使用するため、航続距離を最大2〜3割ほど短くする可能性があります。
    • シートヒーターやステアリングヒーターの使用により航続距離への影響を最小限に抑えることができます。
  3. 重量による影響
    • エンジン車と比較するとバッテリーの分重くなっているので、コーナリングや下り坂でのブレーキングに注意が必要です。
    • 回生ブレーキをうまく使うことで、航続距離の伸長と安全運転を両立できます。
  4. 回生ブレーキ
    • アクセルペダルから足を離すと回生ブレーキによって減速します。
    • 減速時に電力を生成しバッテリーに充電、航続距離を延ばします。
  5. ワンペダルドライブ
    • アクセルペダルの操作のみで加速・減速・停車が可能です。
    • ブレーキペダルの使用頻度が減少して、運転が楽になります。
    • ペダルの踏み間違いリスクの低減につながります。
    • ただし急な割り込みなどに備えて、ブレーキペダルをすぐに操作できることが必須です。
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